本には人生が変わる
「ヒント」が詰まっている
よくある質問に「自由に使える時間が無限にあったら、やりたいことは何ですか?」というのがあります。
僕の場合、「ひたすら本を読む」という答えになります。
本を読んでいる時間が幸せで、「この時間がずっと続いたらいいな〜」と思います。
世界が広がったり深まったり……そして、著者と心のなかで対話するような、そんな感じが好きなのです。
なぜ、そんなにも本に魅せられてしまったのか?
実は、正直、大学生の頃まではマンガ以外の本をほとんど読んでいませんでした。マンガは人並みに読みましたが、実家にいるとき、自分の部屋の本棚にはほとんど本が置かれていなかったのを覚えています。
そんな自分が変わったきっかけは、大学4年生のときにありました。
就職活動のとき、同じ会社を受けていた大学の友人がいるのですが、彼のブログがとにかく面白い文章で、読んでいるとぐいぐい引き込まれるのです。
なぜ、彼はこんなに面白い文章を書けるんだろう?
ずっと疑問に思っていました。
学校の中を一緒に歩いていると、彼は、ことあるごとに、ポケットから小さなメモ帳を出して、何やら書いていました。
「それ、何を書いてるの?」と聞くと、「ふだん、気づいたことがあったら書いてる」と答えが返ってきましたが、僕は当時、「気づく」ということがピンときませんでした。
あるとき、その友人の部屋に遊びに行ったとき、僕の部屋の(わずかしか本が置かれていない)本棚とは、まったく違った本棚が、そこにありました。
彼は建築学科だったのですが、建築とはまったく関係のない本ばかり置いてあるのです。
何冊かぱらぱらとめくってみましたが、内容はよくわかりませんでした。
ただ、何となく、その本棚がうらやましくなり、僕は近所の古本屋に行って、1冊100円の本を買い込んで、読み始めました。
人気があってみんなが書いたがる本は当然ながら値段がちょっと上がるので、1冊100円の本は、あまり人に読まれないような、マニアックなものが沢山あります。色々な分野を超えて手当たりしだいに読んでいくと、まったく異なるジャンルの本に書かれていることが、頭の中でちょっとずつつながっていく感覚がありました。
こんなにおもしろい世界が広がっていたのか!
僕にとっては新鮮な発見でした。
気がつくと、僕は手元のメモ帳に、本を読んで思ったことや、歩きながら考えたことを書き留めるようになりました。
最初は気に入った本の一部を引用して書き写していましたが、途中から、自分がどんなことを考えているかを書くようになり、書いているうちに「発見」が増えてきました。
「これが『気づく』ということか!」それからは、アルバイトで稼いだお金がちょっとたまると、すぐに古本屋に行くようになりました。
「本と私」について、自分の原体験は、当時の「1冊100円の本を買い込んで、楽しみに家に帰っていた、あの嬉しい時間」です。
本を読んでいると、ときに、「人生が変わるヒント」がもらえます。
僕は、その喜びを人と共有したいなと思い、2023年に東京の九段下で小さな書店を開こうと思い立ちました。
思い立ったらすぐ不動産サイトを開いて、内見を申し込み、気がついたら1週間後には物件を決めていました。(と言っても、潤沢な資金があるわけでもないので、せいぜい5坪ぐらいの賃料が安い物件です)
僕が経営する「かぴばら書店」で売りたいものは、人生のちょっとしたヒントが見つかる体験です。
多少なりとも本を読んだことのある方なら、「仕事の気づきになった1冊」や「印象に残った1冊」ぐらいは、わりとあるのではと思うのです。
そんな本に出会い、味わう体験をつくれたらいいなと。
さらにその先に「人生が変わるきっかけになった1冊」が見つかったら、とても素晴らしいことです。
人生のヒントが見つかる「本」という存在に感謝しつつ、残りの人生を歩んでいきたいなと、僕はそう考えています。
店主の想い
Blog
ぜひご一読ください。